遠野市中心市街地活性化へ第一歩

 平成十年度当初から遠野市では、遠野市中心市街地の商店街の代表者、遠野商工会、岩手県 商工会連合会東部広域指導センターとともに、中心市街地活性化基本計画策定事業に取り組ん できましたが、十一月五日付けで国に計画書が提出されました。
 あわせて、遠野商工会では商店街関係者と消費者と連絡協調を図りながら、中心市街地商店 街の活性化を推進するTMO構想(タウンマネージメント計画)を策定し、遠野市からTMO 機関として指定を受けました。
 平成十一年度から本格的に事業を始めていくこととなります。TMO情報は第一号で、この 「中心市街地活性化事業」とはなにか紹介します。

中心市街地活性化の必要性
 昨年、大規模小売店舗法が廃止と引き替えの形で、大規模店舗立地法と併せて中心市街地活 性化法が成立しました。これは、中心市街地商店街の衰退を食い止め、地域の生活文化の中心 である商店街の整備と一体的な形で整備し、中心市街地の商業者に活力を与える目的で、意欲 的な取り組みを図る全国の市町村と商業者集団(商店街等組織)を国が様々な施策で支援する ものです。
 遠野市においても、バイパスが開通後、駐車場を確保した大型専門店、スーパーマーケット などが立地し始めました。その出店のスピードは予想以上に早く、今や、ほとんどの業種がバ イパスに揃うようになりました。また、消費者のライフスタイルの変化(買い物のレジャー化)、 車社会への急速な進展(中心商店街は大きな駐車場は確保できないという問題点の浮上)など、 様々な問題を抱えるようになってきました。
 しかし、柳田國男の遠野物語にもあるように、かつての中心において馬の市が開かれ、周囲 の村々から人々が集まり、にぎわい溢れる城下町でありました。また素朴な土地柄からたくさ んの昔話、伝統行事が残る風情ある土地となりました。
 様々な古き良き伝統、風習、人々の気質を生んできた中心市街地を、このまますたれさせる のではく、以前のように、またはそれ以上に活気溢れる町並に変えていきたい。その想いが 今回の中心市街地活性化基本計画策定事業に盛り込まれました。

基本計画とTMO構想ができるまで
中心市街地活性化法が成立したのは、昨年五月二七日、施行されたのは七月二七日。そして、 遠野市の中心市街地活性化基本計画及びTMO構想が提出されたのは十一月五日。わずか、 四ヵ月余りで計画が練られているように感じられるかしれませんが、様々な皆様のご協力と、 過去何年かの商業活性化に関する調査事業の報告がフルにされてこの計画が作られたのです。

〈市の基本計画〉
中心市街地活性化基本計画策定委員会は五月二一日第一回委員会が開かれました。中心市街 地の七商店街代表、すずらん振興協同組合の代表、消費者代表、岩手県商政課、遠野地方振 興局、遠野市関係各課、商工会、岩手県商工会連合会東部広域指導センターなど関係機関を 加え、最初の検討委員会が行われました。
また、商店街の若手後継者を中心に、中心市街地活性化基本計画策定の作業部会が設置され、 五月二七日に第一回委員会が開催されました。
'9dこれらの基本計画策定委員会、作業部会は延べ八回開催されました。

〈商工会のTMO構想〉
 市の委員会とは別に商工会でも併行して策定委員会と作業委員会が開かれました。商工会 では各商店街の懇談会、説明会、担当機関会議など多数の会議を行いました。また、市の基 本計画やTMO構想がどのように検討されているのか、各商店街の方にミニ情報を延べ一六 号発行しました。

〈民間の協力と事業推進〉
遠野市の中心商店街をよみがえらせる上で、ご協力をいただいたのは商店街の皆様だけでは ありません。建築士の皆様にもご協力をいただきました。遠野市では以前より「遠野市コミ ュニティーマート構想プロジェクト委員会」があり、官民一体の街づくりに関するプロジェ クトを推進してきました。そのイメージが現実のものになったのは、「遠野ふるさと村」「 遠野風の丘」などです。そして今回、中心市街地の一角に位置する下一日市地区の土地区画 整理事業に合わせた街並み景観づくりにもご協力をいただきました。中心市街地の魅力づく りを推進するため、町家の心を伝えるファサード事業(店舗の外面・壁面装飾の事業のこと。 下一日市地区の場合、商家・町家のイメージにするため、屋根を瓦葺きにしたり、白壁にし たり、格子戸をつけたりする事業)がTMOの指定事業となり、平成一四年まで毎年行われ 計一二件が新しく生まれ変わります。
また、今後の予定として「旧家を活用した観光商業事業」や、「上一日市地区商店街整備事 業」などが予定されています。

基本テーマは 『人にやさしい遠野コリドール(回廊)』

全国に先駆け十一年度より本格的に事業実施することになります。それも、皆様の様々な発 想と意見を取りいれた結果です。
遠野市の中心市街地活性化は、基本テーマ【「人にやさしい遠野コリドールの形成」民話の ふるさと遠野 町衆・町家・町並づくり】です。
このテーマを踏まえ、基本的な骨格と具体化した計画は次のとおりです。

一、町並
 水と緑のゆとりある都市空間をつくる。
1 下一日市地区土地区画整理事業
2 上一日市地区沿道区画整理型街路事業
3 遠野駅周辺整備事業
この町並については、ハード事業が中心です。現在すでに、下一日市地区土地区画整理事業 は進められており、平成十六年まで行われます。歴史的風情の残るまちづくりを進めること を目的とし、古い建物や土蔵を積極的に活用し、創造的保全を図るための都市基盤施設整備 を目指します。
また、上一日市地区、遠野駅周辺については今後調査などを経て、平成十三年度を目標に事 業実施に当たる構想です。どのような地区に生まれ変われば皆様に喜ばれ、賑わいを取り戻 すことができるのか、しばらくは計画作りの話し合いが必要になります。

二、町家
 魅力ある賑わいの商業空間をつくる。
1 上一日市地区商店街整備事業
2 旧家を活用した観光商業事業
3 空き店舗活用事業
城下町、宿場町として形成された伝統文化や「遠野物語」に代表される遠野の特色ある文化 を保存するとともに、商店街の本来の姿である活気溢れるまちづくりを行いたい。人々が集 まる賑わいづくりを行う構想です。

三、町衆
 まちづくりの担い手を育てる。
1 遠野市中心商店街共同販売促進事業
2 意欲ある遠野町衆の育成事業
街づくりを行う上で必要なこは、「やる気のある若者の育成」です。何においても共通する ことでしょうが、商店を切り盛りするのも人、人を引き付ける魅力ある街をつくるもの人。 そのためのソフト事業を実施する構想です。なお、今回の事業の中で、商店街の若者の意見 が採用され実現を目指すものもあります。

四、交歓
 人と情報のふれあいネットワーク事業
1 下一日市地区文化施設整備事業
2 止まり木設置事業
3 情報ネットワーク事業
4 顧客管理(カード化)システム事業
5 ふれあい交流センター整備事業
商店街の人々が集まり、道すがらちょっとした会話を楽しむ。井戸端会議ならぬ道端会議の 発想から、止まり木設置事業は生まれました。止まり木は平成十一年度、上組町・穀町・石 町の3つの商店街で行う事となります。遠野らしい雰囲気のあるものにする構想です。その 他、昨年「すずらんスタンプ」に替り「スキップカード」がスタートしました。このカード を活用した顧客サービスを行う構想です。

五、物語
 個性豊かな華やぎのドラマを演出する。
1 町家の心を伝えるファサード事業
2 民具を生かした個店のサイン化設置事業
3 祭事&催事振興事業
4 ギャラリー・ミニコンサートなどの交流事業
ファサード事業は下一日市地区の土地区画整理事業とともにすでに始まっています。これは、 商家のイメージを醸し出す壁面の装飾事業で、この事業を推進する「遠野下一日市まちや振 興協同組合」という新しい協同組合が設立されました。商店街では更に街並みのグレードア ップを図ることにより魅力ある街づくりを目指します。国の補助金が導入されますが、自己 資金を投じても街づくりにかける地域住民の方々の意気込みは、「下一日市地区景観形成住 民協定書」を作ることにも現れております。

現在、計画されている事業は全部で十七事業。その実施主体は八つの商店街、スタンプ会、 ショッピングセンターなど様々です。これらの事業を推進するため「遠野市中心市街地活性 化連絡協議会」が発足しようとしています。すでに一月に設立準備会議が開催され、発足間 近です。月一回の連絡会議、共同催事など様々な事業を行う構想です。
どんな意味?

~「TMO」~
タウン・マネージメント・オーガニゼーション」の略称。中心市街地の商店街を総合的に管 理・運営する機関のことです。遠野市から指定を受け遠野商工会が役割を担います。

~コリドール~
基本テーマに使われているコリドール。それは回廊の意。折れ曲がって長く続く廊下のこと。
魅力的で特色ある商店街となることで、この回廊を歩いてほしいという目標です。

編集後記

このページは、TMO機関である遠野商工会が、遠野市の皆様にTMOの推進状況をお知らせ するために発行しているTMO情報を掲載したものです。全国で、まだ数箇所しか名乗りをあ げていないこの事業に遠野市が取り組むことになり、10年4月より取り組んでまいりましたが、 前例もなくまだ未知の事業です。中心市街地活性化の取り組みをなされている方々のお役に立 てればと載せましたが、どうぞご指導のほどよろしくお願いします。


ご意見・質問お問い合わせは…
遠野商工会まで
Tel:62−2456
Fax:62−2356
E-mail:shokokai@echna.ne.jp
http://www.shokokai.com/tohno/

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