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だからといって恐怖を感ずるような目時ナではなかった。
やがて中程まで降りて来ると、道の真中に高い山から崩れ落ちたと思われる大きな岩がある。ここから右頂上を振り返ると、今にも崩れ落ちそうな大岩が幾つも重なりあって、その岩の形が巨大恐竜にも見える処まで来ると、目時ナの背負っている叺(かます)を誰かが引っ張っているようである。
目時ナは人気がないのに叺の中の魚を取ろうとする狐の悪戯であろうと感じた。そこで、その場にどっかりと座って、煙管(キセル)を抜いて煙草に火をつけ一服をする。「狐は火を恐れる」と昔から言い伝えがある。
それから心を落ち着けて再び坂を降り始めると、又背負っていた叺に何度も悪戯するのだが、なんとかして暗い道を気を着けながら降りて来ると、道は曲がりくねった堀割りとなり益々歩きにくく、あたりの雑木林は折かさぶるように茂っていて、歩くたびごとに、小枝がぱちぱち顔を叩く。
狐は叺を引っ張るので、目時ナたまりかねてマッチをこすっては火を見せるとどこかへ去っていくが、又悪戯する。
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