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もぐり人は身支度をして沼の中に入った。身体に縄をつけ水に潜った。しばらくすると合図があるので引き上げた。
もぐり人の話の大要はこうであった。「可なりの底までもぐって見ると大きな松の木のようなものがあってその上に苔が生えていて、そのうす気味の悪さは例えようもなかったが兎に角縄を結びつけてみようか」と言うのであった。
好奇心にかられて沼のほとりに集まって来た人々は怖いもの見たさに、力を併せて綱を引いた。沼の面に引き上げられた怪物の正体は、幾百年か年を経た大百足であった。人々はただ唖然としてその大百足を見つめる許りで、暫くは驚きの声すら立て得なかった。
この大百足が度々峠に出て蓑笠になり幾多の人々の生命を沼に吸い込んだことか・・・やがて吾に返った人々は、更にその大百足のからだを検べた。胸の急所と覚しきところに槍が突き刺されていた。人々は、玉山昇の剛胆さに感服しないものが、なかったと言う。
話は変わって盛岡の玉山昇の家である。
昇の叔父が書斎で本を読んで居ると、五つになる姪の御蓮がトントンと走ってきた。何のつもりかはだしで庭に下りると庭先の石垣にスルスルと登った。
不思議なことをする子供だと思って眼を離さずに見て居ると、登りきるや否や実に醜怪たるいたこの面相に変じケタケタと笑った。叔父は「己れにっくき妖怪奴」とかけてあった槍をば取り「えいっ」と一突き突けば「ギャッ」と叫び声をあげてどさりと下に落ちた。
見れば可愛い姪である。叔父は、「しまった」と思い家内の者どもを呼び寄せ介抱に手を尽くしたが何の甲斐もなかった。
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