狐と蒸気機関車の衝突(その四)

 秋の夜空に生える月明かりの晩をわざわざ選んだのか、又よく某機関士の乗車であることを如何にして知るものや、我々にしても不思議なことづくめである。狐達が、毎回月明かりの晩だけを狙うのは何故か?

 今夜も又雲一つない月夜なり今夜の舞台は金田一駅を発車して間もなく(速度も未だ速くなかった)駅近くの岩舘山の下にさしかかった時、突然三狐達が仕立てたと思われる今一つの汽車が黒煙を吹き上げる音も物凄く、照明燈も輝きを増し、上りに向かって進行してきた。機関士達は圧倒されんばかりの勢いだった。しかしかねてより覚悟をしていたので、これが狐達が化けた汽車であろうとブレーキもかけることなく勢いよく衝突を決行し、あっと言う間に正面衝突したのである。瞬間そのショックも感じなかったが、機関士達はその現場を確認のため停止。少し逆戻りして見ると汽車に裂(ひか)れた狐のとも足(後足)が一本線路脇に落ちていたと言う。

 これが岩舘いわこの足であることが後日判明したのである。汽車は急ぎ再び発車し青森方面へと向かった。この事は駅員達で何の訳か、ひた隠しにされていたと言うが、次第に水が漏れるように、村人達の耳にもやがて実状が伝わって行った。

 事件は一件落着と思われたのも束の間、母親狐の足を裂れた悔しさの余り、娘狐のきんこが数日後夜になると某機関士の家に通って、寝静まった頃を見計らって茅葺(かやぶき)屋根をガザガザと茅を引き抜くような音をさせて悩ませたと言う。

 この機関士は一戸在と聞く。その後機関士もたまりかねて巫女から拝んでもらったら、狐に悪戯した祟りなり。と言われて以前のことを反省し、自分の乗車の時はわざわざ岩舘山の下で一時停止してその度に詫びを入れ、魚類を上げて態度を改めたと言う。

 それ以来このような事件がなくなり、総てが円満解決したと言う。

 その後岩舘山を通る人達は三本足であるいていたいわこの姿を見かけていたと言う。いわこもそうだがまんこやとらこ達の子孫は数代その縄張りを護りながら、今も尚若き世代に引き継がれて居るであろうか?!

戻 る→