かねがさきの民話 〜二の台のニネゴ〜

二の台のニネゴ

 昔むかし、永沢の二の台に大きな谷地(湿地)があって、フルタビッキ(がま蛙)がいっぺぇ住んでいだったど。そのなかに、うんと大っきいやつがいて、まのけぇザル(家畜の飼葉を入れるザル)を伏せたよりもまだ大っきく、目玉がギョロギョロ光り、からだには山みでぇなイボがなんぼも出ていて、薄気味のわりぃやつだったど。なしてだがわがねぇが「ニネゴ」と呼ばれ、大っきな鼻音のような声で鳴くので、みんながらおっかねぇがられでいたったずもや。

 それに、谷地にはカヤヨシがいっぱい生えてで、風が吹くとザヤザヤと音がするし、ニネゴは、おなごに化けて人を化かすというので、夜になると、めったにそこらを歩かねぇようにしてだったと。それでも、若柳から長志田に抜ける小道があったので、たまには通る人もあったずも。

 風のすこしある、ある晩のことだったずも。ニツ谷の臨左エ門が、長志田の親類に行っての帰り、その谷地のところを通ったれば、カンザシだのユウガイだの髪にさして、美しく着飾ったおなごが立ってだったど。

 おなご好きの臨左エ門のことだから、そばさどっかり座りこんで話しかけたども、首を振ったり下げたりして、ニコッと笑うだけで、なんにも言わねぇがったど。そんでも、ときどき、ススッとかサラサラッと音がするので、何か語ったのだなと思って話しかけると、わけのわからねぇ音ばかりで返事はなかったど。

 よっぽど経ってから、めんどうくせぇがら、引き寄せようと思って、いきなり抱きついたれば、何かつかんだような気がしたども、さっぱり手応えがなかったずも。何回、つかんでも同じことだったど。

 そのうちに、おなご、ひこざり(膝をついたまま下がる)して、だんだん遠くに行くがら、あと追っかけでって、ようやく頭おさえつけたずも。しめた、と思って横になったども、疲れているがら、そのまま寝込んでしまったずも。

 次の日の朝、臨左エ門は谷地の中で、カヤヨシの尾花をぎっちりとつかんで寝でだったどや。



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