かねがさきの民話 〜ハヤばあさん〜

ハヤばあさん

 昔はな、食うものが足りねぇがったから、タナ池(屋敷内の小さな池)さ漬けておいた種籾まで、よく盗まれたもんだったずもや。種籾は農家ではいっちばん大事なものだから、種籾を漬けるときはタナ池のそばさ小屋建てて、夜は一晩中守っていたもんだど。

 ある、真っ暗い晩のことだったずも。あるところの婆さまが寝ずの番をしてたれば、狼が来てガブッと噛みついてバリバリと食いはじめたずも。

 爺さまは家で寝てだったずども、その音を聞きつけてたまげてしまって、裸のまんま飛んでったど。爺さまは持っていた手拭をぐるぐると握り挙に巻きつけて、狼の口さ入れたっずも。狼は苦しがってガリッとかじったり、うなり声をあげてあばれたりしたっずも。爺さまは、噛まれたところよりも、胸だの腹だの、爪で引っ掻かれたところの傷がひどくて、婆さまと二人、死んでしまったど。

 この話を聞いた濁沢(みぐさ)ハヤばあさんは「なんたらこったべ。とんでもねぇ事できただらや。おれが行ってぶっ殺してやる」と、ニグラモトツ(荷鞍用の綱)をあるくらい持ってぶっとんで行ったど。

 行ったれば、狼、血だらけになった大っきな口開けて、かぶさるようにとびかかってきたずも。「こん畜生、だれぇ、許すってよ」。ハヤばあさんがニグラモトツを投げたれば、うまく首さ絡みついたずも。すぐと小屋の柱さ結っつけで、ギリギリと絞め殺してしまったどや。

 そいづ見た村の人だち、とくに男だちはびっくりして、ハヤばあさんにお礼したんだど。濁沢の「ハヤばあさん」て言えば、知らねぇ人ねぇくれぇ何でもできる男まさりの、きかねぇ婆さまだったどさ。



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