かねがさきの民話 〜金ベコ〜

金ベコ

 昔むかし、金兵衛という猟師がいたったずも。金兵衛はおっきな雌牛を飼ってで、狩りに行くときは猟犬の代わりにしていだったど。村の人たちは金兵衛の家の牛だから「金ベゴ」と呼んでいだったど。

 ある秋の日のことだど。金兵衛は金ベゴを連れて山さ行ったずも。ところがなんぼ歩いても、この日は鳥っこ一羽さえ見つからねがったど。金兵衛は猟をあきらめて金ベゴと一緒に山をおりてきたんだど。途中であたりが暗くなってきたずも。

 したれば、やぶの中からいきなり熊が出はってきたずも。熊は二頭の子熊を連れていたずもや。ふた子の熊だったずも。金兵衛はドーンと一発撃ち、鉄砲で親熊を仕留めたんだと。んだとも、子熊たちは、逃げもしねえで親熊の屍骸から離れなかったずも。金ベゴはふた子の子熊をむりやり追い払って逃がしてやったんだど。

 その日から金ベゴは、夜になれば牛小屋からどこかさ出て行ったど。ある夜、金兵衛がこそっとあとをつけて行くと、親熊の死んだところで、ふた子の熊に乳ぶさを吸わせていたったんだど。それを見て金兵衛は、涙を流しながら、“もう、猟はやらね”と決心したんだど。

 それから数年後の春のことだったずも。金ベゴと隣の山田村の牛が喧嘩することになったど。喧嘩の勝ち負けで二つの村の豊作を占うしきたりがあったんだど。村の人たちは金ベゴをきれいに飾りたてて「ベゴベゴ、金ベゴ、大きな角でつんなぐれ、となりの村のベーゴに負けるな」とはやしながら、村堺のやしろさ連れて行ったずも。

 んだけんとも、山田村の牛はこなかったずも。ゆんべ、熊に殺されてしまったんだど。その熊は、あのふた子の熊だったんだどや。

 それからは、牛の喧嘩をやめたんだど。



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