かねがさきの民話 〜羽沢のお菊〜

羽沢のお菊

 昔むかし、勘太郎という、うんと欲張りな爺さんがいたったど。ある時、町さ買いものさ行ったずも。途中、羽沢さ通りかかったれば、狐が三、四匹、日向ぼっこをして遊んでいたんだと。勘太郎はそれを見て「やいやい、狐ども、お前だちはいっつも人をだまして食いものを取ってるべ。何か残ってるもの、おれさも食わせろや」と言ったど。狐のいるところでもただでは通らねえ勘太郎だったずも。

 「爺さま、ちょうどええところさ来た。ゆんべ、人をだまして取った油揚、こいつあがらんえ」。狐は油揚ニ、三枚出してご馳走したずも。勘太郎はそれを食って、“ふん、狐なんてちょろいもんだ。こんな奴にだまされるなんて、人間でもよっぽど馬鹿な奴だべ”と思って、町さ着いてからみんなさ話して自慢したったど。

 そして、家で使う油揚、豆腐、こんにゃくなどを買って、夕方、またぞろ羽沢の野さ通りかかったずも。すると、なんと野原一面さきれいな菊の花が咲いてたったど。勘太郎はしばらく見とれていたっずども“いやいや、これは見てるだけでは勿体ねえ。採ってって食った方が利口だ”と思いついて、荷物を置いて菊の花を採り始めたんだど。

 採っても採っても菊の花はいっぱい咲いてて、なじょしても採りきれなかったずも。勘太郎は“そうだ、家さ帰ってみんなを連れてきて採るべ。ほかの人に採られるのはしゃくだ。よし、人に採られねえうちに”と、採った菊を背負ってはせで家さ帰ったど。

 「みんな、はやく羽沢野の菊の花っこ採りさあべ。おらぁ、こんなに採ってきたど」。背中の菊の花を見せると、婆さまは「何ぬかす。爺さまがしょってるのはみんなカンナクズでねすか」と怒ったずも。勘太郎は「うんにゃ、菊の花だ」と言ったど。「爺さま、お菊に化かされて来やんしたな。一体全体、面つきがほんとでねぇ」。婆さまはそう言うと、爺さまの胸倉をとってゆすったずも。

 勘太郎はハッと、羽沢野さ置いてきた荷物のことを思い出したんだと。それでもまだ様子がおかしかったど。婆さまは土間から木炭塊(すみこごり)と塩を持ってきて「キジンカエレ、キジンカエレ……」と三偏唱え、塩を振りまいて狐を追い払ったんだど。狐は「ヂャゲン、ヂャゲン」となきながら逃げて行ったどさ。

 この話は「羽沢のお菊狐」とも「羽沢のネネンゴ」ともいわれているど。



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