かねがさきの民話 〜檀原のキツネ〜

檀原のキツネ

 昔むかし、三太郎というおどさまがいだったと。妹のオヨシは一里ばかり西の村さ嫁にいっていだったずも。ところがオヨシは産後の肥立ちが悪くて亡くなってしまったど。三太郎は妹の嫁ぎ先さ行き、葬式をすませて、泣き泣き帰ってきたずも。檀原にさしかかったころには、人影もわからないくらい真っ暗になっていだったど。そのころ檀原は松林や雑木林がこんもりと繁り、昼間でもうす暗くて、薄気味悪いとこだったど。

 ふっと後ろの方から、かすかに女の泣き声がしたど。泣き声がだんだん近づいてきたど。なんと、その声は亡くなった妹、オヨシの声だったずも。「さっきた、土の中さ埋めたばかりなのに」。三太郎は背筋がザワーッと冷たくなったど。三太郎はおっかなくなって、後ろも見ないで家さ向かって走ったど。するとオヨシの声も追っかけてきたんだど。

 家に着くと、女房がびっくりしたずも。「とっちゃ、なじょした。真っ青な顔してよ」「オヨシの泣き声が聞こえるべ」「なあに言ってんだが。なんにも聞けねぞ。酔っ払ってしまって。さっさと風呂さ入って寝るんだ」

 しかたなく三太郎は風呂さ入ったずも。ところが風呂場のすぐ外から「あんにゃ、あんにゃ(兄さん、兄さん)」と聞こえたんだど。ひょっと壁の方を見ると、窓の下さちゃっけな穴が開いていて、その穴からなにかのびてきたずも。それは細いほそ〜い手だったど。

 三太郎は「ギャーッ」とさかんで風呂から飛び出し、頭から布団をかぶってしまったど。すると今度は雨戸を叩いて「三太郎あんにゃ、泣くなよ」と言って、遠くへ去っていく音がしたったど。

 しばらくして、三太郎ははっと気がついたど。「そうか、檀原の狐がおれのことをなぐさめに来たんだな。オヨシの声を真似して……」。それでも三太郎は布団の中でまたブルブルふるえていたったどさ。



Copyright (C)2001.Kanegasaki Town society of commerce and industry
E-mailFkanesho@lily.ocn.ne.jp