かねがさきの民話 〜後生平物語〜

後生平物語

 昔むかし、雪がしんしんと降っている夕方のことだったど。三ヶ尻の道を、一人のお坊さんが歩いていたったど。道に迷って、どこか泊まる家がないかとさがしていたんだと。

 しばらくすると、雪にうずもれた山小屋のような家が見つかったずも。深い雪をこいでようやくその家に辿り着いだど。「もうし、もうし」。すると、むしろの戸を開けて爺さまが出てきたど。「旅の僧だが、ひと晩泊めてくれませぬか」。爺さまは困ってしまったど。「見でのとおり、わしらが寝るだけでせいいっぱいのあばら屋でして……。それに布団もありません。この道をもう少しのぼっていぐと大きな屋敷がありますので、そこで泊めてもらってはいかがでしょう」

 お坊さんはとても疲れている様子だったど。「ずーっと、この雪道を歩いてきたので、もう一歩も動けませぬ。私が横になれるところであれば、どんなに狭くてもいいですから、どうかお願いします」。そこへ婆さまも出てきたど。「それは困ったべ。まず、入らんえ」。お坊さんは、雪を払って中に入ったど。それでも、寒くてブルブルふるえていたったど。

 「申し訳ねがす。まきも食うものも何もねくて。いま用意すっから、ちょっと待ってけらんえ」。婆さまは、焚きつけを集めてきて火をおこしたど。爺さまは、外へ出て庭に植えてある松の木を切ってきたど。生の木なので燃えねくて、部屋中煙がいっぱいだったども、お坊さんはとても喜んでくれだったど。食うものは、米がないので芋がゆを作ってごちそうしたど。

 次の日はすっかり雪が晴れて、いい天気になったど。お坊さんは出がけに二人にこう言ったど。「あなたたちの親切なおもてなし、本当にありがとうございました。お二人は、後生、平らかになるでしょう。それから、きのう切った松の木は新しい芽が出て大きな木になるでしょう」

 このことがあってから、中村地区の西の方を「後生平」と呼ぶようになったんだど。後生平らになるというのは、あの世へ行ってまでも幸せに暮らせるという意味だど。その言葉通り、松は大木になり、二人は幸せに長生きしたんだとさ。

 この時のお坊さんは、弘法大師という、えらい和尚さんだったそうな。



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