かねがさきの民話 〜上田屋長者物語〜

上田屋長者物語

 昔むかし、上田屋のおやじが酒を飲んで帰る途中のことだずも。百岡の山道を通ると、菊ヶ森の方から「ばれてぇ、ばれてぇ」と呼ぶ声がしたずも。「ばれてぇ」というのは「負ぶさりたい」という意味でがんす。おやじは酔っぱらってたし、酒の勢いも手伝って「そのくれえばれてぇがったら、勝手にばれぇろ」と言ったずも。

 したれば、何かがバサッと背中さ負ぶさってきたずも。「あれ、何だべぇ」。そのどきは軽いと思ったずども、家の近くさ来ると、ずったり重てくなってきたずもや。やっと家さ一歩足を踏み入れたれば、どっと倒れてしまったど。急に背中が軽けくなったので、起き上がってみるど、黄金のいっぺぇ入った袋が落ちていだったど。

 この黄金のおかげで、上田屋は大した金持ちになったずも。地所は中島から一本木のどころまであって、「げんのだら」という、一石ぐれぇ入る米俵を積んで風除けにするぐらいだったずも。こうして上田屋長者と呼ばれるようになったんだど。

 ところが、長者は金持ちになると、だんだんとケチになって、作男だちに無理な仕事を言いつけるようになったずも。秋祭りの日のことだど。三十人もいる作男だちが「お祭りを見さ行がせてけらんえ」と頼んだずも。長者は、“三十人を一日休ませたのでは勿体ねえ”と思い、「稲を全部刈ってホンニョ(稲架)に積み終わったらば行ってもいい」と言ったずも。作男たちは一生懸命頑張って仕事を終わらせで、お祭りさ行ったずも。

 んだども、早く仕事を終わらせるベとして、長げ棒抗さいっぺぇ稲を積み重ねたので、稲が蒸れてしまって、米がいつもの半分しか取れなかったずもや。そのうち、稼いでだ男だちも一人減り二人減りして、ついには誰もいねぐなったずも。

 広い田んぼだの畑は稼ぐ人がいねぐなって荒れ野原となったずも。長者の家もだんだんと落ちぶれて、とうとうもとの貧しい上田屋になってしまったんだどや。

 



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