昔むかし、胆沢のあるところに、みぞろが池という沼があったずも。その沼のそばに、孫四郎という百姓が住んでいたったど。孫四郎は、毎日毎日、みぞろが池のほとりさ行って草刈をしていたずもや。 したればある日、沼の中から美しいおなごが出はってきて、一通の手紙を差し出したんだど。「お前がこの手紙を上方の鴻の池という沼に届けてくれるなら、路銀としてこれをやる」と言って、「尽きずの銭差し」という物を出したずも。 孫四郎はそれを受け取って、ちょうど村から発つお伊勢詣りの人だちさまざって上方さ行ったど。そして首尾よく、その言いつかった手紙を鴻の池の主の許さ届けたずも。そのお礼に、今度は一頭の葦毛の駒を貰って帰ってきたんだど。 その駒は、一日に豆一粒だけ食わせれば、不思議なことに、黄金を一粒生んだずもや。ところがそれを、なまけ者のあんつぁ(兄)が見ていたずも。あんつぁは、“よし、一度にいっぺぇ豆を食わせだら、いっぺぇ黄金を生むベ”と思って、孫四郎がいねぇどき、うんと豆を食わせたずも。したれば、駒は急に元気いぐなり、パッカパカと駆け出したずも。そして、あのお駒ヶ嶽さ飛んでってしまったんだど。 毎年春になると、駒ケ岳の雪が馬の形に消え残るのはそのためなんだど。その馬の頭は南部に向き、尻は秋田の方さ向いてるベ。こっち側の物を食って、あっちの里さ糞を落すので、秋田の国は豊かなんだどや。 まだ、駒ケ岳の頂上にある岩の上さ、その馬の蹄の跡があるんだと。いづか行ってみんべな。 |
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