かねがさきの民話 〜大工と鬼六〜

大工と鬼六

 昔むかし、う〜んと流れのはやい大っきな川があったど。村の人だちは、向かいっ側の村さ歩いて渉るべと橋をかげだんだど。んだども大雨が降って橋が流されてしまったんだと。何遍も橋をかげで、そのたんびに流されで、ほどほど困りはででいだったどさ。

 「こうなれば腕のいい大工に頼むしかねえな」。村の寄り合いでこう決まったんだと。その大工は「うん」と引き受けだけんとも、丈夫な橋をなんじょに造ればいいのが心配になったど。そんで、川のほとりにうずくまってじっと流れを見ていだんだと。

 したれば、水面にブクブクッと泡が浮がんだがと思うど、ポカッと鬼が出はってきたずも。「なあに、そんたに考えてるんだ」。鬼が声をかけだど。「ここさ橋をかげだいけんとも、あんまり流れがはやいもんで困っでだどこだ」。鬼は笑っで「お前ではなんぼ頑張っても無理だべ。どうだ、おれがやってやっか。おれだば一晩で出来てしまうぞ。だどもただではわがね。お前の目ん玉を寄こせばやってやる」と言ったど。

 大工は、なんぼ鬼でも一晩で橋をかけれるもんでねえと思っで「おう、いいさ」と返事したんだと。鬼はニヤッと笑って川の中さ消えてしまったんだと。

 次の日、大工は川さ行ってたまげてしまったど。なんと、立派な橋がかかっていたっだずも。そこさ鬼が出はってきて「さあ、約束だ。目ん玉寄こせ」と怒鳴ったど。大工はブルブルふるえてしまったど。「目ん玉取るのだけは助けてけろ」。大工は拝みながら何回も何回も頼んだど。そしたら鬼は「今さら何言ってる。だめだだめだ。だどもたった一つ、おれの名前を当てたらば助けてやっから」と言ったど。大工が「あしたまで待ってけろ」と頼むと、鬼はおっかない顔をして「あした、ここさ来なかったら、お前を食ってしまうからな」と言ったど。

 「どうするべ」。大工はふらふらと山の方さ逃げて行ったずも。森の中さ入っていぐど、わらしゃどの歌っこが聞こえてきたど。「はやく鬼六ぁ目ん玉ぁ持って来ばぁええなぁ。はやく鬼六ぁ目ん玉ぁ持って来ばぁええなぁ」。歌ってだのは鬼のわらす(子供)だちだったんだど。

 次の日、大工が川さ行ぐど、すぐ鬼が出はってきて「おれの名前がわがったが。わがらねえべ。はやく目ん玉寄こせ。」と言ったど。大工はわざど「う〜ん、オニスケかなあ」と言ったずも。「うんにゃ、そんでね」「うだば、ロクスケだ」。鬼はちょこっとピクッとしたったど。「うんにゃ、そでね。さあ、目ん玉寄こせ」と、今にもとびかかってきそうだっだずも。大工はおっきな声でさかんだど。「オ・ニ・ロ・ク!」。したれば、鬼はプクプクッーと川の中さ消えてしまったんだとさ。



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