「なもみ」とは
「なもみ」とは、岩泉町に伝わる小正月の伝統行事で、鬼の格好をした男たちが家々を練り歩き、家内安全・無病息災を祈願するものです。各地でなもみと同じように小正月の伝統行事が行われていますが、秋田では「なまはげ」、吉浜では「スネカ」というように多少呼び名は違うものの、言うことを聞かない子供を戒め、健やかな成長を祈るという点では共通のようです。また、なもみの語源については、怠けていろりにばかりあたりすねが赤くなる状態をこの地方の方言で「なもみ」と呼びますが、その怠け者を戒めるためになもみ(すねの赤くなった部分)を剥ぎ取るという意味で「なもみたぐり」と呼んだのがはじまりと言われています。

さて、岩泉商工会青年部では、毎年小正月の夜に岩泉町に古くから伝わる伝統行事「なもみ」を行なっております。戦後一時は途絶えましたが、約27年前に商工会青年部で復活させ、伝承活動を続けています。町内の各地区の青年会や消防団などで「なもみ」復活に着手したり復活させたりしていますが、3〜4年で止めてしまったり準備段階で終わってしまうケースもあるようです。
鬼の装束に身をまとった青年部員が「悪いわらしはいねがー」、「悪いわらしは山に連れでぐぞー」と大声で家々を練り歩き、言うことを聞かない子供を戒め、同行する御祓い役がお札を配り家内安全・無病息災を祈願します。基本的には、幼い子供のいる家庭でなもみを呼びますが、子供のいない家庭や歳男、歳女がいる家庭では御祓いだけやってほしいという家もあります。なもみは日が沈み暗くなってから行われますが、例年1月15日の午後6時頃から約20軒の家々を回ります。
入魂の儀
なもみを始める前に、神社で入魂の儀を行ないます。入魂の儀は、なもみ役、お面、蓑や手袋、髪の毛、出刃包丁、錫杖等のなもみの衣装、御祓い役の幣束に魂入れをする儀式で、魂入れをすることでなもみ役が人間から神様の使いとしてのなもみになると言われています。それと同時に、なもみ役、御祓い役、青年部員、青年部OBが御祓いをしてもらいます。また、なもみの衣装は、蓑、髪の毛など大部分が山ぶどうのつるの内皮で特別に作ったものです。現在は作れる人がいないため大切に扱っています。
家々を練り歩くなもみ
なもみは、玄関や窓、壁をドンドン叩き、「泣ぐわらしはいねがー」、「言うこときかないわらしはいねがー」などと大声で叫びながら家々を回ります。なもみが家に入って「泣ぐわらしはいねがー」と叫ぶとほとんどの場合に子供達は泣きだします。そして、なもみは泣いてる子供に、これからはいたずらをしないで親の言うことを聞くように約束させます。なもみが帰った後、子供達は安心して泣き止むわけですが、さらに子供達を戒めるためもう一度戻ってきたりもします(商工会青年部では「なもみ返し」と呼んでいます)。なもみが帰ると見せかけて、再び「泣ぐわらしはいねがー」とやるわけです。このような子供達の戒め方は先輩達から受け継がれています。
「言うこと聞かないわらしはいねがー」、「悪いわらしは連れでぐぞー」となもみが言った場合に、泣いている子供が助けを求めているのを見計らって「そんなに悪いわらしではないから連れて行かないで」とか、「言うことを聞くと約束してるから許してあげてくれ」などとなもみをなだめ、酒を飲ませたりして帰すのが親(家主)の役割になっています。そして、子供はそういう親をみて尊敬の念を抱くという暗黙の了解があるのです。